「ゼロ票確認ガチ勢」は実は書類に名前が残ります。

投票箱が本当に空であることを確認する

国会議員選挙や都道府県知事選などでは、通常、午前7時に投票が始まります。その日の最初の有権者には、非常に重要な役割があります。

それは、組み立て前の投票箱が本当に空であることを、皆の前で確認することです。

私は過去に投票所の「中の人（投票所責任者・投票管理者）」を経験したことがあるため、少し詳しく説明します。

「組み立て前」という点が重要なのは、もし事前に誰かが投票用紙をすり替えたり、書き入れて箱に入れておく可能性を排除する必要があるからです。もちろん、通常の運営ではそんな不正は起こりませんが、可能性を完全に防ぐための手続きとして設けられています。これは 公職選挙法施行令 第34条 に規定されています。

第34条では、次のように定められています：

空であることを確認する人は？

この確認を行うのは以下の三者です：

• 投票所責任者（投票管理者）
• 事前に選ばれた2名の立会人
• そして、その日の最初に投票しようと来た有権者（当日決定）

近年、ネット上ではこの「最初に来る有権者」のことを「ゼロ票確認ガチ勢」や「零票確認ガチ勢」と呼ぶ人もいて、これを目的に早朝から投票所に並ぶ方もいます。実際、毎回常連のように1番乗りされる方も存在します。

何時に行けば「ゼロ票確認ガチ勢」になれるのか？

では、「何時に行けば1番になれるか？」という質問についてですが、残念ながら一概には言えません。私が関わった投票所では、投票事務の人員が午前6時に集合し、そこから準備を始めます。ですので、6時前から投票所前に並ぶ方もいました。実際、中の人より先に来て待機されていることのほうが多かったです。

ちなみに、投票所の備品（養生シート、記載台、机・椅子など）は、前日のうちに半日かけて設置を済ませることが一般的です。また、投票管理者は投票日の朝（たとえば午前5時過ぎ）には選挙管理委員会事務局で必要物を受け取って、投票所に向かいます。当然ですが、寝過ごしは許されず、また交通事故も絶対に避けなければならないため、それは尋常ではないプレッシャーがありまして、目覚まし時計2個＋テレビのタイマー起動など、二重三重の対策を行っても、前日は熟睡なんてとても不可能です。

「ゼロ票確認ガチ勢」狙いの方がバッティングしたことも

さて、少し具体的なエピソードを。ある選挙で、投票所が小学校の体育館だったことがあり、学校の門が3か所に分かれていました。ところが、そのうち2か所の校門で6時前から待っている人がいて、「誰が1番乗りか」がもめたことがあります。結局、その場で話し合って決めましたが、その後、次回以降は前日から「1番乗りの方は正門前でお待ちください」という案内を各門に掲示するようにしました。

もし「ゼロ票確認ガチ勢」を狙う方は、事前に選挙管理委員会に問い合わせて、投票所のどこの場所で待てばいいか確認するのが良いと思います。

空の投票箱を確認する手順はどんな感じ？

そして、午前7時になったら、ラジオの時報をきっかけに投票開始となります。投票管理者は投票所入口で次のようにアナウンスします。

「ただいまより、○○選挙の投票を開始いたします。」
「公職選挙法により、1番目に投票される方には、空の投票箱の確認をしていただきます。しばらくお待ちください。」

このアナウンスがないと、「いつまで待たせるのか」「まだ中に入れないのか」といった不満を招くおそれがあります。そのため、予防的に必ずこの案内をすることが習慣となっています。

アナウンス後、1番乗りの有権者を投票所内に案内し、空の投票箱を確認していただきます。その後、箱を組み立てて南京錠をかけ、ようやく通常の投票がはじまります。これは、いわば「ゼロ票確認ガチ勢」の人が果たす重要な役割のひとつです。

「ゼロ票確認ガチ勢」は公式書類に名前が残る

しかし、この「名誉」だけがメリットではありません。実は、この確認を行った方の氏名が、投票所で作成される公式書類に記録されるのです。

この書類は「投票録（とうひょうろく）」と呼ばれ、投票管理者・立会人とともに、「最初に投票した人」の氏名も記録されます。

中の人には毎度のことで、空の投票箱は珍しいものではありませんが、「空の箱を自分の目で見てみたい」という方は、次のいずれか、以下の手段がありますのでご参考まで。

• 　「ゼロ票確認ガチ勢」になる。
• 　「投票立会人」になる。
• 　中の人（臨時事務職員（アルバイト））になる。（投票日の1か月前頃までに、選挙管理委員会事務局に投票所のアルバイトがないか聞いてみるのが良いでしょう。）

以上、選挙の投票現場における「裏話」として、ご紹介しました。